テーマ:「思想差別とのたたかい 東京電力の職場から

講師:鈴木さん

【要旨】 2000年11月16日 公開学習会

 みなさんの中にも、卒業後どの仕事に就こうか考えている人もいると思います。職業というのは、人間にとって大きなものですから、夢と希望の持てる職業に誰もが就きたいと考えていると思います。しかし、過労死を生むほどの長時間過密労働や会社の都合だけしか考えない首切りリストラなど、「日本の職場には憲法なし」といわれる実態もあります。

 その焦点のひとつが思想差別です。「思想信条によって差別しない」という憲法の条項がありながら、日本の職場には以下のような差別が未だに残っています。そして、思想の自由が守られないような職場で、労働者が大切にされるはずもなく、夢のある仕事をできるはずもありません。憲法が守られる職場を、というのは国民みんなの願いです。(以下は、話を聞いた学生の感想をもとに再構成。文責は民青駒場班にあります。)

1、思想差別の実態

 鈴木さんは18歳の時に東京電力に就職しました。東京電力とは関東一円に電力を供給している民間では世界最大の電力会社です。ここに就職できた鈴木さんは、このような大きな企業でみんなの暮らしを支える電気をつくるという仕事に携われることを喜びました。

 しかし、入ってみると、この会社の内部で行われていた思想差別にぶつかることになります。東京電力は前身となる二つの会社が合併してできたものなのですが、その時代には電産という労働組合が強力な闘いを展開しており、労働者の暮らしを守る様々な要求を勝ち取っていました。そして、この運動では、日本共産党員が大きな役割を演じていました。会社側はこの運動を敵視し、レッドパージなどを通じてこれを壊滅させようとしました。そして、東京電力になってからも、その教訓から全社的・組織的に日本共産党への攻撃を行ったのです。日本共産党員だと思われた人に対しては、昇進や賃金を差別したり、職場八分にしたり、社宅に入れさせなかったりと、人権を全く無視したことが行われたのです。

 鈴木さんは20歳で労働組合の役員となり、労働者の要求実現を求めて活動していました。鈴木さんが2回連続で役員選挙にトップ当選すると、会社は次の年に選挙に介入し、猛烈な反共攻撃を行い落選させられます。そして、先にあげたような攻撃が鈴木さんにも加えられていきました。

 こうして日本共産党員への差別が徹底されると、労働者の権利を守る組合はなくなり、職場からは民主主義が失われました。また、会社に差別されている人とはうかつにしゃべることすらできなくなり、職場の人間関係も破壊されました。このように客観的に見て、日本共産党員への差別は全労働者への権利侵害につながるということから、鈴木さんは裁判をおこすことを決意します。

2、裁判での勝利

 裁判は鈴木さんも予想できなかったくらいに長引き、19年2ヶ月の時間を費やしました。鈴木さんはこの間、この裁判を人間の信条に攻撃をしかけてきたものに対する、人間の尊厳を守るたたかい、そして、日本の民主主義を守るたたかいと位置づけてたたかい抜きました。同じような目にあった人や同じ思いをもった人がたくさん団結し、その結果、5箇所の地裁で勝利し、会社から全面一括解決を勝ち取りました。こうして、やっと職場に憲法の精神が通るようになったのです。

3、不正を見過ごさない生き方を

 たたかう相手は巨大で、苦しいたたかいでしたが、人間の尊厳と日本の民主主義を守ることができ、社会進歩を確信できたので、たたかって本当によかったというのが鈴木さんの思いです。今でも労働者がひどい扱いを受けている職場はたくさんあると思います。これから社会に出ていったときに、それを見過ごさず正そうとする、そんな生き方がすばらしい生き方と言えるのではないでしょうか。

「普段の生活では知れないことに驚き。」(参加者の感想より)

  • 職場での思想差別の実態なんて、普段生活している中では、絶対に知ることができない。戦前の治安維持法とかならともかく、今の日本でも、こんな問題があるとは思わなかった。
    講演者が最後まで自分の考えを貫こうとした姿は、すごいと思う。そのためには、社会のことなどをしっかり勉強しているのが大事なんだということが伝わってきた。自分もがんばって勉強したい。

inserted by FC2 system