(以下は、『しんぶん赤旗』の記事などをもとに再構成。)
目次1、1200人を前に 2、安保のこと 3、経済のこと 4、未来のこと〜「21世紀を希望ある日本に」「若者こそ未来ひらく力」 |
1、1200人を前に
日本共産党の志位和夫書記局長(当時)は99年5月29日、母校の東大本郷キャンパスの五月祭で講演し、日本共産党の日本改革論を、約1時間45分にわたり、縦横に語りました。
主催は民青同盟東大本郷班・駒場班と講演会実行委員会です。志位書記局長が東大五月祭で講演するのは初めてのことです。
「日本共産党が自民党に反対するだけでなく、どんな日本と世界をめざしているのか知りたくて」「戦争法の今後はどうなるのか」「テレビで有名な志位さんの話をぜひ聞いてみたかった」などと話題になり、開始前から会場前に長い列ができました。2階席のある大教室は満席で、立ち見の人もぎっしりとなり、1200人の参加者で埋め尽くされました。
東大生や首都圏の学生、高校生らが志位書記局長の話に熱心に聞き入ります。志位書記局長のユーモアを交えた話に、しばしば会場は笑いにつつまれ、うなずく人、真剣にメモをとる人の姿もありました。
会場の大きな拍手に迎えられた志位書記局長。志位さんが登壇すると、「志位さーん」の声がとびかいます。
志位さんは、1973年の入学の年に日本共産党に入党しました。そして79年に卒業した志位さん。「計算が合わないと思うかもしれませんが……」と会場をわかせながら、「未熟さもあり、試行錯誤もありましたが、精いっぱいのエネルギーをぶつけて、自分の生き方の土台を築くことができたのが学生のときでした」とふりかえり、「ぜひ21世紀を担うみなさんが、社会の大きな動きとのかかわりで自分の生き方の確かな指針をつかんでほしいと思います」とのべました。
当時の田中角衛内閣がだしてきた小選挙区制導入に反対してわずか11人で学内デモをしたこと、夫人との出会いのエピソードなど、ユーモアをまじえながら話す志位さんに、参加者も笑顔でこたえます。
青年を対象にした2つの国際比較調査を紹介し、日本の青年のなかで現状への不満、未来への不安が大きいことについて、「自民党政治は若者に未来への希望を与える力を失っています」と指摘。「日本は同じ資本主義国のなかでも政治と経済のゆがみが特別にひどい」「今日は、どうすれば21世紀の希望ある日本にできるか一緒に考えたい」とのべ、日本共産党の日本改革論を、日本のゆがみの実態にそくして縦横無尽に語りました。
2、安保のこと
日本のゆがみ、その第一は、安保・外交のゆがみです。
自民・自由・公明の3党が成立を強行した戦争法(ガイドライン関連法)について、「海外で米軍が戦争をはじめたら、その戦争に日本が参加する」ものだとのべ、「憲法破りの法律を強行した勢力には、歴史の審判を必ず下さなければなりません」と強調しました。
NATO(北大西洋条約機構)は99年4月、「新戦略概念」を決め、国連の決定がなくてもNATOの地域外で介入・干渉戦争をおこなうと宣言しました。「日米安保も鏡に映したようにまったく同じ変質をとげています」と日米安保とNATOという2つの軍事同盟の変質が全世界的規模で起きていることを明らかにしました。
「戦争法をめぐるたたかいはこれからがいよいよ大切になります」と指摘した志位さんは、「5・21集会」で陸・海・空・港湾関係者はじめ5万人の参加者が「法案にもとづく戦争協力を拒否する」ことを確認したと強調。「戦争法の具体化、発動を許さない共同のたたかいをさらに広げましょう」と訴え、法律そのものを廃止に追い込むことを呼びかけるとともに、「憲法を守り、発動を許さない民主的政府の樹立はいよいよ大事な課題です」と指摘。さらに「地球的な規模で米軍の横暴をおさえる国際的な連帯のたたかいを探究するすることが大切になっています」と訴え、大きな拍手をあびました。
志位さんはさらに、「安保条約の是非を真剣に考える時期にきています」と指摘し、安保条約の解消をめざす日本共産党の将来展望も4つの角度からズバリ明らかにしました。
(1)日本国民多数の意見さえまとまれば、アメリカへの「通告」(安保条約第10条)だけで安保はなくせる
(2)安保をなくせば、アメリカが矛先を向けている諸国との緊張と紛争の火種が取り除かれ、日本の平和の土台は強固になる
(3)非同盟諸国首脳会議に参加し、アメリカともアジア諸国とも本当の友好を築く
(4)自衛隊は国民の大多数の合意が成熟した段階で解消し、憲法9条を完全実施する──。
「憲法に政治の現実を近づける努力をしてこそ、世界から信頼される日本になります」と強調、会場から拍手がおこりました。
3、経済のこと
日本のゆがみ、その第二は、経済のゆがみです。志位さんは、3つの角度から「ゆがみ」に切り込みました。
第一は景気対策の逆立ち。政府は大銀行とゼネコンを支援するばかりか、大企業の首切りまで本格的に支援しています。志位氏は「消費税減税とともに、雇用不安と社会保障の不安を取り除く政治が必要です。日本経済を本当の回復軌道にのせるためには、経済政策の根本からのきりかえが必要です」と強調しました。
第二は日本の「ルールなき資本主義」といわれる現実。日本には残業規制がないどころか、サービス残業までが横行していること、有給休暇が短いうえにとりにくいことを数字をあげて紹介。「大企業の民主的規制」について解き明かしました。
第三は税金の使い方の問題。日本は、税・社会保険料負担にたいする給付の割合が欧米に比べて小さいことを指摘。公共事業には巨額の税金をつぎ込み、無駄な事業を推進している実例もあげて批判しました。
志位さんは、日本共産党が「資本主義の枠内での民主的改革」によってこのゆがみをただそうとしていること。日本共産党が社会の段階的発展論の立場にたち、国民多数の合意で社会の変革を進める党であり、資本主義の矛盾を乗りこえる新しい社会の展望をもっていることをあげ、「若者が希望のもてる社会にするかどうかは、みなさんの選択にかかっています。みなさんの行動で新しい日本の未来が開けます。私もみなさんといっしょに新しい日本を切り開く運動の先頭にたっていきたい」とのべ、会場から大きな拍手を受けました。
4、未来のこと〜「21世紀を希望ある日本に」「若者こそ未来ひらく力」
質問タイムでは、会場のあちこちで「ハイハイ」と手があがります。最初の質問は、赤と白のしまのワイシャツ姿の東大生が「鋭い国会論戦の秘けつはなんですか」。「営業秘密ですが」と笑わせながら、「質問は事実と論理が大事。そして想定問答をくりかえします」とあかした志位さん。「介護保険はどうなる」「足立区の区長選は」などの質問にもていねいに答えたあと、マルクスの言葉もひきながら、こんなメッセージで講演を締めくくりました。
「社会発展の法則を見抜いて、その方向に自分の人生を重ねあわせて生きることこそ、もっとも人間らしい生き方だし、人生の生きがいがあるのではないでしょうか。いま、この方向に、青春の輝きを見いだしている多くの若者たちの運動が広がっています。ここに21世紀の日本の未来があると確信しています」
(参加者の感想より)
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