テーマ:「日米安保と米軍基地問題を考える」

講師:山崎静雄(日本共産党政治外交委員)

【要旨】 2000年11月1日 公開学習会

 米軍の基地は、なぜ日本におかれているのでしょうか。日本の安全のため?世界の平和のため?本当にそうでしょうか。米軍の中で日本の基地がどのような役割を果たしているのかを見てみると、日本の政府の言葉に隠された米軍基地の目的が見えてきます。

 また、繰り返される米軍人によるレイプ事件や基地周辺の騒音被害など、基地被害も深刻です。普段なかなか知らされることのない、米軍基地の実態です。(講師のお話を再構成。文責は民青駒場班にあります。)

1、見過ごせない基地被害

 基地の問題を考える上では、そこに駐留している軍隊がどういう軍なのかということが、まず大事です。在日米軍の性格ですが、これは「なぐりこみ部隊」とでもいうべきもので他国に侵略する際につかわれるものです。沖縄の海兵隊や横須賀の空母などがその典型ですが、それらは日本周辺のみならず中東にまでも素早く展開できる機動力をもっていて、まさしく全アジアの脅威となっています。このような他国の侵略用軍隊を駐留させていることは、米軍基地のある他の国と比べても極めて異常なことです。

 また、基地をおくことの地域への被害というものは沖縄をはじめとして深刻です。環境汚染や騒音に始まり、米軍車両による交通事故や米兵の性犯罪が多発しています。しかも、そのような事件が起きても、米兵が基地に逃げ込んでしまえばすぐには逮捕もできないため、被害者は泣き寝入りすることが多く被害の実態は相当なものになっていると思われます。このことは保守の稲嶺沖縄県知事でさえ地位協定の見直しをいっていることからもうかがわれることでしょう。

 最近、厚木の市長が米軍と絶縁宣言をしたことが話題になりました。厚木基地では夜間離発着訓練というのが住宅地の真上で行われすさまじい騒音被害がありました。このあまりの米軍の勝手さに世論も高まり、市長もその声を受けて宣言を行ったのです。

2、米軍に出血大サービスの日本政府

 このような実態から照らしても米軍基地を無くすのは緊急課題と言うべきものです。しかし、それに対して政府がしていることといえば全く逆で、そんな米軍にお金を払って引き留めているのです。いま日本が米軍のために払っているお金は6659億円(2000年度)で、しかもこのうち「思いやり予算」という、条約に照らしても払う義務のないお金が2755億円もあります。アメリカはこれのおかげで、日本に基地をおくとアメリカ本土におくよりもかえって経費をうかすことができているのです。基地問題を解決するにはまずここから改められなければならないでしょう。

3、日本におかれている米軍は侵略用軍隊

 しかし、そんな米軍がいることで日本は平和でいられるのではないかと思っている人も多いのではないでしょうか。確かに安保条約には米軍駐留の目的として“日本と極東の平和と安全の維持”というものが書かれています。しかし、なぐりこみ部隊が置かれているということからも分かるように、それは真実ではありません。実際、アメリカの国防長官などはすでに何度か在日米軍は日本防衛のためにいるのではないということを公言しているのです。

4、アメリカの世界戦略の危なさ

 それでは米軍は何のために日本に居座り続けているのでしょうか。それはまさしくアメリカが世界に覇権をきかせるための手段としてなのです。しかも、これには最近さらに危険な動きが出てきています。それが日米ガイドラインとその関連法です。実は、この問題は昨年(1999年)起きたコソボの空爆と深い関係があります。コソボの空爆はNATOの「新戦略概念」というものをもとに行われました。それまではNATOは加盟国の域内の安全保障を目的としていたのですが、この「新戦略概念」により加盟国に危機を及ぼす可能性がある場合は域外でも軍事力を行使するというふうに性格を変えたのです。この「新戦略概念」にあたるものが日本では日米ガイドラインなのです。「周辺事態」に対して自衛隊と共同で参戦するという基本のところはまさしく同じです。アメリカはNATOと日本によって世界中を自分の覇権のもとにおさめようとしているのです。

5、進められる日米共同作戦の仕掛けづくり

 では、その準備はどのくらい進んでいるのでしょうか。実は、日本でもすでにアメリカと共同作戦をとるための計画が秘密裏に進んでいます。自衛隊が参戦した場合の指揮体系もできつつあるし、自治体や民間を動員するためのマニュアルもできているということです。このように密かに動き出している危険な事実を私たちは知って食い止めなければなりません。

「米軍が、日本を守るためにいるのではないと言っているとは。」(参加者の感想より)

  • 在日米軍の構成など細かい点から話していただき、アメリカの世界戦略やその中での日本・自衛隊の役割がよくわかりました。
    アメリカが何度も公式発言として在日米軍が日本を防衛するためにいるのではないと言っているというのは、驚いた。

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