テーマ:日の出町ゴミ処分場フィールドワーク

【要旨】 2000年9月 フィールドワーク

 21世紀は環境問題がますます重要な社会問題になることは、間違いないことでしょう。その一つがゴミ問題です。東京都日の出町には、ゴミの最終処分場がつくられようとしており、それに反対する住民運動が行われています。ゴミを捨てて終わりとするのではなく、私たちのすべてに関わる問題として、どうやってゴミ問題を解決していったらいいか考える必要を感じます。(以下は、フィールドワークで聞いたことや事前学習をもとに作った、日の出町の問題についての解説です。文責は民青駒場班にあります。)

1、強行的なやり方は行政と住民の溝を深めるだけ

 東京日の出町にある一般廃棄物最終処分場「二ツ塚処分場」の建設をめぐり、土地の明け渡しを拒んでいる元地権者たちに対し、東京都は2000年10月10日に代執行を行いました。代執行とは、行政代執行法に基づく手続きで、元地権者たちが土地を自主的に明け渡さない場合、都が元地権者たちに代わって土地を強制的に収用することです。

 この代執行は、廃棄物処分組合が、地域住民との対話を重視せずに公共性を強調し、適切な情報公開を拒否してきた結果としての暴挙でした。そこには地域住民の理解を得ながら対応するという姿勢が全く見られませんでした。ではそもそもどうしてこのようなことになってしまったのでしょうか。

2、一枚の写真からすべてが始まった

 1992年2月、日の出町の谷戸沢処分場にごみが運び込まれるようになって8年が経ったときでした。日の出町に住む永戸さんが処分場を訪れた時、処分場を覆うゴムシートがあちこちで破れているのを発見しました。ゴムシートはゴミを燃やした焼却灰が直接地面にふれないように処分場の地面を覆っているものです。焼却灰にはダイオキシンなどの有毒物質が残留しています。その有毒物質がゴムシートの穴からもれて地下水に流れ出ている恐れがあります。永戸さんは持っていたカメラを取り出し、シャッターを切りました。そして住民がその写真をもとに、汚水漏れがあるのかないのか、処分場を管理する三多摩地域廃棄物広域処分組合に、周辺の地下水の水質データなどを見せてほしいと頼みました。しかし組合はこれを拒み続けました。そこで住民はデータの閲覧を求める仮処分を地裁八王子支部に申し立てました。

 地裁八王子支部は組合にデータを閲覧させるように命令しましたが、組合はこれに従いませんでした。それどころか、「求められているデータはもともと存在しない」とひらきなおり、逆に住民を訴える始末でした。しかし96年、組合は突然、いままで「ない」と言ってきたこのデータを公開したのです。組合がそれまで情報公開をせず、都合の悪いデータを隠していたことが明らかになったのです。

3、ダイオキシンや環境ホルモンの検出

 処分組合が99年1月に実施した二ツ塚処分場周辺の侵出水調査では、環境基準の45倍に相当する一リットルあたり14ピコグラムのダイオキシンが検出されました。環境ホルモンも、日本で使用が禁止されているペンタクロロフェノールが検出されました。しかし組合は「きちんと下水処理しており問題はない」と居直ったのです。

 私たち民青同盟東大駒場班が行った日の出町へのフィールドワークでは、この処分場を見学に行ったわけですが、処分場自体には柵が張りめぐらされていて、入ることができませんでした。処分場に隣接する山に登って山の上から処分場を見学しました。広大な敷地に、ゴミの焼却灰が埋め立てられていました。私たちが通った山道の周辺の木や草はほかの場所の木や草よりも青枯れていました。これはダイオキシンを含む焼却灰が風で飛散していることの表れです。

 それから私たちはこれらの問題に関するビデオを見せてもらいました。その中では、過去10年間で処分場周辺の住民のガンの死亡率が全国平均の4倍であるという報道も紹介されていて、処分場の実態や人体への危険性をあらためて認識しました。

4、ゴミの減量、リサイクルを進めよう

 ゴミ問題の解決のためにはどうしたらよいのでしょうか。その基本はゴミをできるだけ出さないことと、出たゴミはできるだけリサイクルすることです。95年に容器包装リサイクル法が制定されました。97年4月にはペットボトルの再資源化が本格的に始まりました。しかし、ペットボトルの回収量は生産量の増加に追いつかないため、廃棄量が年々増大しています。

 ゴミを減らしリサイクルを軌道にのせるためには、住民と自治体が協力して努力することが不可欠です。そして生産・消費・収集の過程で事業者の責任を明確にすることが大切です。最終処分場を住民の反対を押し切って建設することでは何の解決にもなりません。今こそゴミを少しでも減らし、灰にしないという根本に、一刻も早く足を踏み出すことが大切なのではないでしょうか。

「現場に行ってはじめてわかること。」(参加者の感想より)

  • 山登りがいい運動になった。ゴミ処理場の現場がフェンスとかで隠されていて驚いたまた、現場近くでは、木が枯れていたり、植物に突然変異が起こっていたりと怖くなるような生々しい事態がたくさん見られた。現場に行くことで地域住民の声がまったく無視されていることがますます実感させられた。
    現場に行くことで、視野も広がったし日頃の運動不足も解消されて、すごくよかった。

inserted by FC2 system